スクリーンの中の霧の情景
幕府軍艦操練所

2005年11月01日

 水牛だより11月1日

冬の足音がたしかに聞こえる今日、水牛レーベル8枚目のCD、日本語で歌う「冬の旅」を発売しました。ジャケットぜんたいのデザインが独特です。水牛のCDはいつも紙のジャケットにしていますが、これまでのようにボール紙に別の紙を貼ったタイプではなく、厚紙に直接印刷して、折りたたみ糊付けしてあります。二つある入口の片方にCD、もう片方に歌詞カードが入っています。作ってくれたのは旭川にある印刷所です。親切できちんとしていて安くて速い! 電話とメールで連絡とデータをやりとりし、翌朝配達の宅急便があるおかげで、距離を感じることはあまりないのです。

11月19日はシューベルトが亡くなった日です。「冬の旅」東京公演はこの命日をはさんだ三日間。出演者と会場の都合をあわせて決めた日程が偶然こうなっていたのでした。はたして偶然なのだろうか、と思ってみるのも興味深いものです。コンサートのための新作の詩をご紹介します。おそらく死を意識していたころのシューベルトの詩です。どんな歌なのか、それは当日のお楽しみ。

   民衆に訴える
     フランツ・ペーター・シューベルト(作曲・訳詞:高橋悠治)

  時代の青春は終わった
  民衆の力も
  流れ行く群衆のなかに埋もれて
  使いはたされた

  苦しみにさいなまれ
  あの力の名残りさえ
  時代にさまたげられて
  実りなく消える

  民衆は歌を忘れて
  病んだ時代をさまよう
  あの日の夢を捨てて
  顧みることもなく

  ただ歌だけが運命に
  立ち向かう力をくれる
  かがやく思い出をえがき
  苦しみを和らげて

「水牛のように」を2005年11月号に更新しました。
雑誌の目次のように、原稿の順番をきめるのは更新のための最後の楽しみです。今月はタイからはじまってインドネシア、イラク、イタリア、ドイツとめぐり、どこともわからないふしぎの国に足をふみいれ、日本へというふうにしてみました。テーマをもうけることはしないので、「水牛のように」は目的のない旅のようなものです。

新しく出た藤本和子さんの翻訳を2冊。
『不運な女』は1982年にピストル自殺をしたリチャード・ブローティガンの遺品の中からひとり娘が発見した最後の小説です。藤本さんが書いた『リチャード・ブローティガン』をあわせて読むとよりおもしろいと思います。
『闇の夜に』はブルーノ・ムナーリの絵本。イタリア語版とおなじくイタリアで印刷されています。黒や半透明の紙が効果的に使われていて、ページをめくるのが楽しい。簡素な日本語にもつい見入ってしまいます。

11月30日には金沢で「冬の旅」の公演があります。翌日12月1日に帰ってから作業をしますから、更新はいつもよりおそく、1日夜になると思います。そして3日からは北海道ツアーです。どこでもおいしいものが待っていてくれそう。暗い冬の北に旅する者の特権です。

★この文章を書いた人→八巻美恵★こんな時間に→2005年11月01日 11:07 ★トラックバック




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