電詩「電子本創世記」
東京国際ブックフェア2004レポート3「手段としての電子本」

2004年05月03日

 東京国際ブックフェア2004レポート2「電子書籍ビジネス」

ごめんなさい、また長文になりました。レポートに続きがあるなんて考えた人は少なかったかもしれませんが、そうなんです、まだあるんです。ひょっとしたら、もうひとつあるかもしれません。書けば書くほど止まらない、もうどうしようもありません。でも、このレポートと前のレポートは別物ですので、安心して(?)御覧下さい。


「電子書籍ビジネス」

 4月25日午前、東京国際ブックフェアのあるブースに私はいた。どうやらどこかが電子書籍を売るサイトを作ったそうで、そのPRをしている。私は面白そうだと思ったので、そのブースに行って、そこにいたお姉さんの説明を聞いてみた。

 「電子書籍が……絶版本が……新刊書が……オンデマンドで……PDFで……書評が……が……ぐわ……ぐゎ……」

 ああ。空虚に聞こえる。お姉さんの言葉がみんなみんなうつろに聞こえる。何だろう、この気持ち。全然魅力的じゃないや。電子書籍ってこんなものだったかなぁ。からんころん。ぐわんがらん。

 要するに、お姉さんの説明したかったことはどんなことかっていうと、「電子書籍・オンデマンド本出版という新しいビジネスのかたちをもって、当サイトでは手に入りにくい小さな出版社の書籍や、絶版書籍などを、オンデマンド本やPDF電子書籍でお客様にお届けして、そして各本の購入ページからはその本の書評コーナーに直結していて、その本が読者にとってどう読まれているかがまるわかりで、作家のページもあるから、読者と作家が密着してる」んですって!

 で、そこで売られる本がどんなものかっていうと、3000円くらいのオンデマンド本と、1000円くらいのPDFの本(印刷禁止)。そして売られるのはそんなに有名じゃない出版社のそんなに有名じゃない作家の本か、もしくはたぶん需要が少なくて絶版になった本。

 それって、ユーザにとって本当に魅力的? ビジネスとして成り立ちますか?

 みなさんは、読みにくいPDFの本(印刷禁止)で、よくわからない作家の本を読みたいと思いますか? それに、いくら絶版の本であっても、欲しい人は欲しいから買うんだけれど、もともと絶版の本なのだから、みんながみんな買うんじゃないでしょう?

 なんだか、ただ電子書籍を出す、オンデマンド本を出す、ということが目的みたいで、それ以外のところが何にも見えていないような気がした。けれど、私は目の前にいるお姉さんに、そのことを直接言ったものかどうか、とても迷った。迷ったあげく、アンケート用紙に「たぶん私は買わないと思います」と記すだけにとどめた。ごめんなさい、お姉さん。

 で、ブックフェアが終わってから、そのサイトのパンフレットを読んでみたのだけれど、そのときの懸念はどうやら当たっていたみたいで。

「●○は単なるオンライン書店ではありません。出版社様、作家様に対して、新時代の電子出版ビジネスに参加するためのソリューションを提供するというまったく新しい思想に基づくものです。」

 と、書いてある。

 電子書籍・オンデマンド本ビジネスをする、ということが目的であって、別に何のために電子書籍ビジネスをするのか、あるいはどういう関係性を出版社・作家・読者に構築して、どういうふうにものを売っていくのか、あるいはどうすればこの関係性がうまく成り立つのか、そういうことがちゃんと練られていないわけだ。

 確かに、そういう場を提供するというのは新しい思想かもしれないけれど、その場がものすごく投げやりな感じがする。最初からそういう場が提供できればいいわけで、それから何かをこしらえようとしているから、場さえあれば中身なんてどうでもいいんだ、みたいな感じがある。

 電子書籍も、オンデマンド本も、単なる目的になってしまっては、どうしようもないんじゃないだろうか。うまく言語化できなくてもどかしいのだけれど、このサイトがやろうとしているビジネスに対する違和感は、次のようにも書き換えられる。

 電子書籍様! オンデマンド本様! 作家よ、出版社よ、読者よ、皆々、ひれ伏すのじゃ! このサイトさえあらば、君たちは電子書籍様が買えるのじゃ、出版できるのじゃ! オンデマンド本もそうなのじゃ!

 そんな感じ。電子書籍様、オンデマンド本様のための場を構築するのが目的なわけで、それが作家・出版社・読者に必要とされるかどうかなんてどうでもいいように見えるんです、お姉さん。なんだかビジネスとしてのヴィジョンがないように見えるんです、お姉さん。

 こうやって、珍奇なるガジェットが現れると、私達はそれに踊らされるようになっている。同じ25日午前、例のボイジャーブースで野々村文宏さんが言っていたけれど、「電子本ってガジェット」なのである。それはある意味、間違ってないと思う。パソコンで本が読める、ネットワークで本が売れる、なんだかすごいぞ! と、それだけが先行して、その必要性とは乖離したところで、もてはやされ、みんな踊らされる。

 そして、もし電子書籍ビジネスが成功するとしたら、色々あるこの電子の本というやつの特性を、目的として掲げるのではなく、どうやって手段としてうまくつかみ取るか、というところにあると思う。

 電子書籍というガジェットに踊らされて、それを目的としてビジネスをしようとしているうちは、何にせよ、それは失敗すると思う。なので、ビジネスやっている人たちは電子書籍とは関係ないところで、これから色々ビジネスやってください。それで、あなたがビジネスを何かやっていて、あるいは何かしたいことがあって、そのときにもし、電子書籍があなたのビジネスに必要なのだと思ったら、そのときにこの電子書籍くんを使ってあげてください、お姉さん。よろしくお願いします。

★この文章を書いた人→大久保ゆう★こんな時間に→2004年05月03日 12:43 ★トラックバック


 コメント

質問です。ガジェットって何ですか。

Posted by: しみづ at 2004年05月05日 10:22

「コンサイス・カタカナ語辞典」によると、次のような意味になるそうです。

「ガジェット [gadget]
目新しい道具や仕掛け.機械などのちょっとした装置.からくり.気のきいた小物.〈現〉」

SFでも「ガジェット・ノベル」という分類があって、何か新しいテクノロジーや発明品が主となって進んでいく話のことを言います。

Posted by: 大久保ゆう at 2004年05月05日 12:11

ありがとうございました。

Posted by: しみづ at 2004年05月05日 15:42

電子書籍へのアプローチは、いろんなカタチがあるんだと思います。ビジネスとして、作家(というのは何かしら賞を取った人? 公に認められた人かな?)として、とにかく書いて発表したい人として。ブックフェアにはもちろんそんな中の電子書籍をビジネスとして捉えている人たちが多数集ってきます。つまり、出版社や印刷所やソフトメーカー。そんな彼等を擁護する訳じゃないんですが、いちおう彼等も単純に金儲けばかりを考えているんじゃなくて、ユーザーに対して如何に満足行くサービスを行えるのかを一生懸命模索しています。でも、なにせ電子書籍にはいろんな足枷があって、ユーザーにどのように届ければ彼等が満足していくれるのか今もって迷走してます。自分で自分に足枷をかけている場合もあるんですけど。その迷走ぶりが空しく見えるのは確かなんですよね。リブリエのレンタル方式も何かこう、うまくピッタリ収まってない気がしますから。

リュミエールのころの映画(活動写真)もガジェットだったんでしょうねえ。映画を鑑賞できる場所が特定され、映画を創る方法が確立され、興行方法が認知されて初めてガジェットから抜け出たのかもしれません。

Posted by: ag at 2004年05月06日 21:57

ごめんなさい、この文章だと、電子本でビジネスやろうとしている人はみんな、私がよく思ってないみたいに読めますね。本当のことを言うと、別にそういうわけではなくて、結構のサイトや企画や会社は(買うかどうかは別として)面白いなぁ、と思っています。でも私が面白いと思っても、一般の人が面白いと思うかなぁ、という違和感のところをとらえて、勢いに任せて書いてしまいました。まだまだ、電子本ビジネスは始まったばかりなので、褒めるよりも批判した方が得るところが多いのではないかと思って、ずらずらと書きました。

リブリエの書籍レンタル方式は、私もちょっとピンと来ません(方式自体はわかるんですが、60日という数はどういう基準なのかなぁ、と。本が消費されるとしても、90日は欲しい!)。個人的には、もう少しシンプルであってほしいと思います。リブリエが、携帯ゲーム機のようなノリで若い世代に食い込んでいけると、面白くなってくるんじゃないかな、と感じています。

Posted by: 大久保ゆう at 2004年05月07日 21:47

 汚してしまって申し訳ありません。
 この返信がうまくいけば、aozora blog用INCMプラグインの返信機能ができたことになります。
 一日くらいしたら、以下のページでお試しください。

http://homepage3.nifty.com/01117/aozora.htm

Posted by: しみづ at 2004年07月05日 12:55

 ちなみに先ほど文字コードを間違えて送ってしまったのは、以下のような内容でした。ごめんなさい。

−−−−−−−−−−

>「ガジェット [gadget]
>目新しい道具や仕掛け.機械などのちょっとした装置.からくり.気のきいた小物.〈現〉」

 おくればせながら、Shogakukan Bookshelf Basicで調べると、「ガジェット」はないのはわかっていましたが、「gadget」は、

gadg?et
n.機械装置[仕掛け];(うまく工夫した)道具,付属品;小間物;新案.
〜?y adj.

でした。
 (実はこれは発言する口実で、プラグインのテストです)

Posted by: しみづ at 2004年07月05日 13:31

しみづさん、

aozora blogのINCMプラグインを試してみました。なるほど、昔のNIFTYフォーラム巡回ソフトみたいです。Mac版があればいいんですけど。

あっ、それから、文字化けのコメントは消しておきました。

Posted by: ag at 2004年07月06日 21:50

agさん、

>Mac版があればいいんですけど。

 Macの方ではOS Xならば、INCUBEという巡回ソフトで私のプラグインも使えるかもしれません。
http://logic.s1.xrea.com/
 「INCM用プラグイン使用に関するFAQ」の「Q7:INCUBE上で動作確認済みのINCMプラグインがあれば教えてください。」に載っている「B)WEBFORUM用」が、私が改造した(その95%は一 五明さんのものである)cm_blog.pl の雛形としたものです。(たまたまですけど)
 ですから、INCUBEでも動く可能性は高いとは思うのです。(ちなみに、CMLIB15.PLは不要です)

>あっ、それから、文字化けのコメントは消しておきました。

 すみません。お手数かけます。大久保さんにおかれましては、ちょっと気分が悪いかもしれませんが、ご容赦を。

Posted by: しみづ at 2004年07月07日 06:22

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